大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

札幌高等裁判所 昭和61年(行コ)3号 判決

札幌市中央区北一条西七丁目

廣井ビル三階

控訴人

廣井淳

右訴訟代理人弁護士

廣井喜美子

澤野正明

札幌市中央区北一条西一〇丁目

被控訴人

札幌中税務署長

佐藤範夫

右指定代理人

菊地至

片山直樹

斎藤昭三

西谷英二

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一申立

一  控訴人

1  原判決を取消す。

2  被控訴人が控訴人の昭和五七年分所得税について、昭和五八年八月二二日付でした更正(ただし、確定申告により確定した所得金額を超える部分)及び過少申告加算税の賦課決定を取消す。

3  被控訴人が控訴人の昭和五八年分所得税について、昭和五九年一〇月二二日付でした更正(ただし、修正申告により確定した所得金額を超える部分)及び過少申告加算税の賦課決定を取消す。

4  訴訟費用は第一・二審とも被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

主文同旨。

第二主張

当事者双方の事実上の主張は次のとおり訂正するほか原判決事実摘示と同一であるから、これをここに引用する。

1  原判決四枚目裏一二行目に「合算課税制度」とある次に「の規定」を加える。

2  原判決六枚目裏三行目に「合算課税」とあるを「資産所得合算」と、同一〇行目に「資産」とあるを「資産所得」とそれぞれ訂正する。

第三証拠

当事者双方の証拠関係は本件記録中の書証目録に記載のとおりであるから、これをここに引用する。

理由

一  当裁判所も、控訴人の被控訴人に対する本訴請求は失当として棄却すべきものと判断するものであるが、その理由は次のとおり付加、訂正するほか原判決理由説示のとおりであるから、これをここに引用する。

1  原判決一一枚目表一二行目に「一方、」とある次に「三〇条、」を加える。

2  原判決一一枚目浦九行目の「尊重すべきであつて、」から同一二行目末尾までを「尊重すべきであるが、租税法規といえども憲法の明文はもとよりその諸原則に違反してはならないことは勿論である。当該租税法規がその目的において合理制が認められず、あるいはその適用の結果が憲法の諸原則に照らして、その許されるべき合理的限界をはるかに越えているなど、立法府がその裁量権を逸脱し、当該租税法規が著しく不合理であることが明白である場合には、裁判所もこれを違憲としてその効力を否定することができるが、右の程度に至らない場合、直ちに違憲の問題を生じることはないものと解すべきである。」と改めてる。

3  原判決一二枚目表九行目に「採られているが、」とある次に「それは、生計を一にする親族のうち、(イ)夫と妻、(ロ)父又は母と子、(ハ)祖父又は祖母と孫との間で、これらの者の中に資産所得を有する者がいる場合に、主たる所得者(資産所得以外の最も大きい者、総所得金額から資産所得の金額を控訴した金額のある者がいないときは資産所得の金額の最も大きい者)の所得に所定の額を超える資産所得を有する親族(合算対象世帯員)の資産所得を合算し、これに一般の累進税率を適用して税額を算出したうえ、これを主たる所得者の総所得金額と合算対象世帯員の資産所得金額とに按分し、それぞれの税学をもつて主たる所得者及び合算対象世帯員各個人の税額(ただし、合算対象世帯員については、資産所得以外の所得が場合にはその所得について別に計算した税額が合算される。)とする制度である。そして、」を加える。

4  原判決一二枚目裏九行めに「制度である。」とある次に「これらの制度はいずれも世帯の状況による担税力の差を考慮したものであるが、」を加える。

5  原判決一四枚目表八行目に「裁量が認められているのであつて、」とある次に「しかも、課税単位の問題については、憲法は何ら触れるところがなく法律の定めるところに委ねているのであるから、現行所得税法が個人単位主義以外の課税単位制を採用したとしても、それが直ちに憲法の基本原則たる個人の尊重や法の下の平等の原則に違反するものではなく、また、」を加え、同一〇行目に「制度であるから、」とある次に「被合算者が、この制度により合算されない場合に比べて多額の税額を負担することになるというだけで直ちにそれが財産権の不当な侵害とはいえず、したがつて」を加える。

6  原判決一四枚目裏一一行目に「主張する。」とある次に「確かに現行の累進課税体系のもとにおいては、夫婦資産所得合算課税制度の対象者とされる夫婦は対象とされない独身者よりも不利益に扱われていることは明らかである。」を加え、同一三行目に「合理的な」とある次に「理由による」を加える。

7  原判決一五枚目表七行目に「なつた場合」とある次に「(本件は正に右の場合に該当する。)」を加える。

二  よつて、原判決は相当であつて、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、控訴費用の負担について行政事件訴訟法七条、民訴法九五条、八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 舟本信光 裁判官 安達敬 裁判官 長濱忠次)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例